(やや専門的な内容になります)
 いわゆる「生活保護」は、日本国憲法第25条第一項「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という規定を具体化するために制定された、生活保護法(昭和25年法律第144号)によって、病気やその他の事情により生活困窮に陥った国民に対し、国が最低限度の生活を送れるよう、生活費等を給付する制度です。

 ここでいう「国民」とは、日本国籍を持つ者を言い、外国人(日本国籍を持たない者を指し、無国籍者を含む概念です。参照「生活保護手帳別冊問題集2019年版」(中央法規))は、生活保護の対象とならず、この制度による保護は受けられませんが、当時の厚生省社会局長通知(昭和29年5月8日社発第382号)により、「当分の間」、一定の在留資格を持つ外国人においても法による保護に準ずる取扱いをすること、とされています。

対象となる外国人

 生活保護の対象となる外国人は、すべての在留外国人ではなく、適法に日本に滞在する、次の在留資格をもつ外国人です。
 いわゆる「就労ビザ」は含まれておらず、また当然に「家族滞在」(就労ビザを持つ者の配偶者、子)も含まれていないことに注意する必要があります。

①永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、及び定住者(いわゆる「別表2の資格」)
②特別永住者
③認定難民

 ①の「永住者」とは、原則として日本に10年間在留し、その上で税、社会保険、年金も完納しており、その他の公的義務も果たしている、在留状況が大変良好な方が取得できる資格です。
 また「定住者」は、いろんなケースがありますが、例えば、海外に移住した日本人の子孫にあたる日系人や、幼少期から日本で過ごして来た人などが含まれ、いずれも日本人や日本社会に結び付きが強い人たちです。

不服申し立て

 生活保護法に基づく決定に関する処分は、行政不服審査法(平成26年法律第68号)の対象ですが、審査の対象となる処分とは、「公権力の主体となる国または地方公共団体が行う行為のうち、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているもの」をいいます(昭和39年10月29日最高裁判所第1小法廷判決)。
 しかし、この外国人への生活保護の給付決定は、法律に基づく処分ではなく、いわば行政機関内の内部通達による措置に基づく決定であるため、行政不服審査法の審査の対象にはならないと解されています(不服申し立てを行っても、処分性を欠くという理由により、却下されます)。

保護対象地
 生活保護を実施する機関(自治体)は、原則として、要保護者の居住地の機関とされていますが、一定の事情がある場合は、現在地とされています(法19条2項)。
 ただし外国人の場合は、在留カードまたは特別永住者証明書に記載された住所地を基準として定めるとされ、この点で法と異なる取り扱いを受けることとなります(「生活保護手帳別冊問題集2019年版」(中央法規))。
 なおその場合でも、配偶者による暴力等から逃れるため、外国人が新住所地への変更の届出が困難なケース(外国人は、住所地を変更した場合は、自治体を通じて入管に届け出る義務があります)のときは、例外的に、住所地と異なっていても、実際の居住地において生活保護を適用して差し支えない、という運用になっています(同)。