法人を設立する際、必ず定款を作成しなければなりません。
オリジナルの定款を作るのがベストですが、その法人にマッチした良い定款を作るには、専門的に勉強し、ある程度の経験を積まないとすぐにはなかなか難しいと思います(そのために我々のような専門家がいます)
そこで、インターネットで法務局が提供する「ひな型」を利用したり、あるいは行政の指導の下に設立する場合(NPO法人を含む各種の組合などではよくあります)は、名前や主たる事務所を書き換えるだけの「モデル定款」を渡されたりして、実は書いてある内容に関しては全く関知しないケースがみられます。
いずれもきちんとした機関が監修するものですので、そのまま使っても法的に問題になることはありませんが、万人向けに作られていますので、法人や会社の身の丈や実情に合っていないと、コストや手間の増加につながります。
パソコンの画面をカスタマイズするように、使いづらい場合は、思い切って定款をいじってみてはいかがでしょうか。
(1)主たる事務所(本店)の所在地を市区町村にとどめる
本店や主たる事務所の所在地を、「福島県会津若松市〇〇町〇〇番地」というふうに、番地まできちんと記載している法人をよく見かけます。
自社ビルであるなど将来に渡ってほぼ引っ越すことはないような法人であればいいでしょうが、理事長など代表する役員の自宅を事務所にしている場合は、役員が変わるごとに定款も変更しなくてはなりません。
しかし市区町村までで止めれば、事務所が移動してもその自治体の中であれば定款は変更する必要がありません(ただし、事務所の場所の登記を変更する必要はあります)。
お得度★★★☆☆
(2)理事会の廃止
定款に「理事会設置の定め」があると、定期に、また総会の前後には理事会を開かなければなりません。また理事会を開いたら、理事会議事録も作成しなければなりませんが、これまで理事会を一度も開いたことがない(10人だけの)NPO法人様も多いのではないでしょうか。
その場合は理事会の定めを廃止し、実情に合わせて総会で全てを決定する仕組みに変え、機動的に決定が図られようにすることをお勧めします。廃止後も「役員連絡会」などと称して、任意に非公式の協議の場を設けることは可能ですので、別に不自由さはありません。
なお、法令により、理事会が必置機関とされている法人(医療法人など)もありますので、必ずご確認ください。
お得度★★★☆☆
(3)公告の方法の変更
そのまま渡された定款には、公告方法として官報の利用が多いですが、中には「○○新聞に掲載する」というのが書いてある場合もあります。決算公告の義務がある法人は、毎年数十万円の掲載料を払わなければならず大変ですが、小さな法人の決算公告に、新聞に載せるまでの重要性、ニュース性があるとも思えません。「主たる事務所の掲示場」に変えましょう。
お得度★★★★★
(4)議事録の作成方法
「署名」とは自筆によるサインを指します。一方、「記名」とは、自筆以外の方法により名前を書くことで、ワープロなど印刷されたものや、ゴム印、他人の代筆も含みます。
議事録を作成する場合、定款に「議長と議事録署名人2名以上が署名捺印する」と定めてあればその通りにしないと有効な議事録となりませんが、極端な話、「議長が記名押印する」とすれば、議長1人がワープロで名前まで印字された議事録にハンコを押すだけで済みます(ただし、議事録の客観性、公正さの担保のため、最低限、議長に加えて議事録署名人一名の署名捺印とすることをお勧めします。また、マンション管理組合など、法律により議事録署名人が定められている場合がありますので、必ず法令をご確認ください)。
なお、理事長が議長を務めるように定めておけば、常に法人の実印を押すことになるので、毎回、実印や印鑑証明書を心配することがありません。
お得度★☆☆☆☆