内容証明郵便とは?
内容証明郵便とは、「いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって当社(郵便局)が証明する制度です」(日本郵便WEBサイトより)。
普通の手紙は、差し出せば相手方の手もとに行きますが、控えを取っておかなければ自分のところには残らないし、もちろん郵便局も手紙の内容に関知しません。
しかし、内容証明郵便は、通常、3通同じものを作成し、相手方、自分、そして郵便局が保管し、手紙にどのようなことが書かれていたか、つまり内容を郵便局が証明してくれるという特別な郵便です。それで「内容証明郵便」と言います。
【コラム】内容証明郵便の出し方
内容証明郵便の効果とは?
書き方に一定のルールがありますが、内容証明郵便の内容そのものに何も特殊なことはなく、言ってみれば「ただの手紙」です。
【参考】内容証明 ご利用の条件等
ではなぜ、内容証明郵便が利用されるのでしょうか。内容証明郵便の効果は、大きく分けて3つあると思われます。
①法律的効果
民法には「意思表示」という概念があります(民法第93条以下)。専門的な説明は省きますが、要は、「〇〇したい」という考えを心の中で思うだけでなく、外に表すことを言います。なおこれは文章で伝えることに限らず、口頭でもよく、また行動によって伝える場合も含まれます(例:お店で「〇〇買います」と言う、またはレジに差し出す→売買の申し込みの意思表示)。
法律上、その「意思表示」が相手に到達したときに、法律的な効果が発生するとされているものがいくつかあります(契約の解除、消滅時効の援用、債権譲渡の通知など)。
内容証明郵便は、この意思表示を伝えて法律的効果を発生させ、さらにその事実を証拠として残すために利用することがあります。
②心理的効果
かつて民営化される以前は、郵便局は国の官公署のひとつであり、よって局員は国家公務員でしたので、内容証明郵便は国家機関が作成に関与したともいえる書類でした(民間企業となった現在は「郵便認証司」という、国家資格を持った人が関与しています)。
紙で作成する場合は、形式が定まっていて、一見したところ特殊であり、また旧来の専門用紙で作成した場合は、法的な文章を匂わせ、独特の見た目があります。さらに料金が通常の手紙よりも少しかかります(1,000円~ほど)。
よって、この「特別」な郵便を出してくる場合は、差出人は「特別」の考えをもっていることが推定されますので、その気持ちが伝わり、まったく無視されていた相手方から反応が来ることがあります。
また強い抗議、警告の意味を込め、行政書士や弁護士などが代理で出す場合は、法的手段を用意した上での最終通告として行うことが通常ですので、心理的なプレッシャーとなることが多いようです。
③事実上の効果
公的な機関である郵便局に控えが残ることを利用し、この文書が確かに存在したことや、①のように法律的な効果は発生しないものの、あるメッセージを相手に伝えたこと、またそれによってその出来事が存在したことなどの証拠として利用することがあります。
具体的には、この本を一読されることをお勧めします。
※内容証明郵便について、弁護士(多比羅誠 先生)が一般の方でもわかりやすく解説したお勧めの本です。「この本があれば、専門家に頼む必要はありません」とまで書かれています(笑)。発売から何度も改訂されていて、私もよく勉強させていただきました。
内容証明郵便は無視してもいい?
前述の通り、内容証明郵便はただの手紙ですので、返事を出す義務はありませんし、そもそも受け取る義務もありません。しかし、次の通り注意が必要です。
・法律的効果の発生を意図した通知(借金の消滅時効の援用など)は、内容証明郵便が「到達」した時点(中身を読まなくても)で発生します。
・内容によっては、異議を申し出ないことにより、その後の行動と相まって、一定の事実として物事が進んでしまう恐れもあります(同意があった、黙認していた、等の推定)。
・専門家の代理によって支払いの請求などであった場合は、無視していれば差押え等の次の手段に出られる可能性もあります(公正証書で契約書などを作成していた場合は「強制執行認諾条項」が入っているはずです。これを根拠にして、改めて判決を得ることなく、より簡単な手続きで給与などを差し押さえることが出来ます)し、警告文などの場合は、相手方が穏便に済ませようとしている状況を無視したことによって、刑事告訴をされるなど、より厳しい対応を取られることも考えられます。
また一見、普通の手紙の様に見えても、通常、内容証明郵便で一般的な文書を送ってくることはありませんので、相手方の意図について分析する必要がある場合もあります。
もし気になるようでしたら、早めにお近くの専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。