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 つい先日のことです。ある日の夕方、中通り地方の道の駅に車を停めて休んでいたところ、「(この辺りでは)珍しいナンバーなので」ということで、生まれて初めてあの「職務質問」を受けてしまいました。私は10代から20代にかけて10年くらい東京に住んでいましたが、警察官の方が声をかけたくなるようなオーラが出ていないのか、これまで一度も職務質問にめぐり合うチャンスがありませんでしたので、「あっ、ついにこの時が来た!」と内心わくわくしました(笑)。学生時代の刑事訴訟法の先生によれば「私は何度も職務質問を受けているが、別に恥ずかしいことではないよ」とのことでしたが、衆人環視の中、後部座席の布のふくらみを指摘されて「これをちょっと剥ぐってみて」と言われ、中に「隠し持っていた」昼寝用の長座布団を見せるというのは、それはそれは恥ずかしかったです。

 このいわゆる「職務質問」は、警察官職務執行法という法律で認められた警察官の職務権限のひとつで、これまで数々の重大事件解決の糸口となっており、われわれ善良なる市民としては協力したいところですが、しばらくはご免ですね!あわせて「もう警察のお世話にはなりたくない」と言いたいところですが、行政書士にとって警察署は日ごろ仕事でお世話になっている代表的な官公署の一つです。

 警察署というと、「逮捕」や「家宅捜索」などのキーワードに代表される刑事手続きを行なう役所を想像しますが、一方で、行政手続きの窓口となる一般的なイメ―ジの行政機関としての顔も持ち合わせています。例えば、リサイクルショップや古着屋などの古物商を始めたいとき、またはゲームセンターなどの遊技場(かなり古い言い方ですが)やキャバレーなどの接待を伴う飲食店など、いわゆる風俗営業で開業したいときなどは警察署が担当窓口になります。また道路を使ってイベントなどを行いたいときの使用許可や、自動車の運転免許、交通事故や交通違反の処理などの道路交通関係、そして犯罪の被害にあった場合に加害者に対し処罰を求める刑事告訴や告発などももちろん警察署の取り扱い業務です。警察署に対するこれらの手続きに関しては法律や規則の取り扱いが大変厳格に行われ、また中には複雑で難しい案件もあることから、われわれ行政書士にとっては腕の見せ所になります。

 さて先日の職務質問。その日はプライベートな移動でしたのでウィンドブレーカーにニット帽、そして花粉症対策のマスク姿だったのですが、一部仕事絡みだったのでつい「仕事で来た」と言ってしまい、「仕事でこんなところまで来るの?どんな会社?」と、その後もやんわりとした追及が続いたので、渋々、行政書士の身分証明書を呈示して無罪放免となりました。この間、およそ5分。「時間を取らせて申し訳なかったけど、こういうのはお願いせざるを得ないんですよ」と、警察官の方の弁。いえいえ大丈夫ですよ。日本の治安はこうした地道な警察活動の積み重ねで維持されているのを実感すると共に、相手の矛盾点を短時間で見つけ出してズバッと突いた、ベテラン警察官の巧みで鍛えられた質問技術に敬意を表します。

(この記事は4/11に福島民報「民報サロン」に掲載された文章の原文です)