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 「遺言を書きましょう」と、一定の世代の方に言うと大笑いします。「がん検診を受けましょう」と言っても笑う人はいないのに、どういうわけか遺言はバカ笑いされてしまいます。一生がんにならない人もいますが、残念ながら人間は必ず死にます。必ず。

 遺言とは何でしょうか。私は「自身が死んだあとに、この世に残る分身です。」と説明しています。亡き後、あなたの代わりに家族や親族を束ねるものです。多くの方が誤解をされていますが、財産の多い少ないよりも、その方を取り巻く人間関係の方が、遺言を作るかどうかの判断材料としてはより重要です。また遺言は本人の為だけではなく、家族の為でもあります。以下、遺言が必要なケースの一例をご紹介しますので、どうぞ笑わずにご検討ください。

『家庭の外に子供がいる場合』-例えば離婚した相手との間に子がいる場合、今の家族と遺産分割協議をしなければなりません。両者が円満な関係にない場合は、遺言を書くことで亡き後も自らが遺産分割に主導権を持つことが出来ます。

『子に事業を継がせたい場合』-相続により事業用の財産が分散され、事業の継続が困難になる可能性があります。

『遺産分割協議への参加が困難な人がいる場合』-相続人がお一人でも欠けた遺産分割協議は無効ですので、行方不明者または認知症など判断能力が十分でない方がいる場合は協議成立が困難になります。その場合は裁判所に代わりの人を立ててもらうこともできますが費用と時間がかかります。

『相続人でない人に財産を与えたい場合』-内縁や離婚の相手、かわいい孫、特に感謝している他人や団体などに財産を譲りたい場合など。

『法定相続分とは違う分け方をしたい場合』-例えば子の経済状況や健康状態などに応じて、弱い子に多く与えたいという場合や、子がいないご夫婦で、両親がすでに亡くなっており、兄弟姉妹がいる場合は兄弟姉妹も相続人となりますので、全てを夫や妻に渡したい場合などは必要です。

『自宅が空き家になりそうな場合』-遺言があれば遺産分割協議をせずに不動産等の名義変更が出来ますので、管理や処分がしやすくなり空き家対策の一助となります。

 ところで遺言はいつ作るのがいいのでしょうか。法律では遺言は15歳から作ることが出来ることになっています(民法第961条)。ただし認知症など正常な判断能力に疑いのある方の遺言は、後になって有効性を否定される可能性がありますし、また判断能力が正常でも、高齢になって複雑で長い文が書けなくなっていると自筆での遺言は困難になります。つまり、遺言について気になった“今”がその時です。私は、70歳の誕生日に遺言を作り、以降、毎年の誕生日ごとに必要に応じて更新することをお勧めしています。

 また遺言は「遺書」を連想させて気持ちが乗らないという方は、自分の財産を一覧にした『財産目録』や『エンディングノート』から徐々に始めることをお勧めします。これらがあるだけでご家族の負担がだいぶ軽減されます。新年を機に自らの段取りで始めてみませんか。死んだ後に感謝されますよ!

(この記事は平成30年1月19日に福島民報「民報サロン」に掲載された文章の原文です。)